わんこ騒動

真夜中、突然夫が「トラがおる!」と叫んでベッドの下にあるゴミ箱を目がけて私を乗り越えようとした。

一瞬何が何だかわからなかったが、寝ぼけていることに気づき「夢やて。トラは下(一階)で寝とるって」と

言うと、また元の場所に戻って爆睡し始めた。

いったいどんな夢を見たのやら。

っていうか、どんだけ頭の中トラジでいっぱいなのさ。



昨日、おかんを買い物に連れて行くため車に乗ろうとすると何やら前輪に毛むくじゃらなものが巻き付いて

いる。

心臓が止まるほどギクッとして、じーっと目を凝らすと犬だ。

犬が私の車の下に倒れている。



ええっ!!??

犬をひき殺した覚えもない。

近寄ろうにも怖くて2メートル以上近づけない。

この炎天下、ここで力尽きて息絶えたに違いない。

ええっ!!??



市役所に電話をした。

公道にいるなら引き取りに行くが、私有地なら引き取れないという。

生きているか死んでいるかによっても担当部署が違うらしい。

日直の職員は、生きている場合の担当部署の電話番号を教えてズラかろうという意思が見える。

仕方がないので夫の帰りを待つことにした。




おかんに今日は買い物に行けない旨電話をすると、おとんに話してこちらに来てくれるという。

この際おとんはジジイでも、一応男だ。

しかし、おとんもかなり大きな毛むくじゃらな犬を見て、「こわいこわい」とビビッている私の横で

「オレもなあ〜」と言っている。

仕方がないのでゴム手をはめ、尻尾を引っ張って引きずり出す覚悟をした私。

一人では怖いが、そばに誰かいればできなくはないかも。



ところが、おとんが長〜い棒で遠くから犬のお尻をつつくと、ナント動くではないか。

「ひえ〜、生きとるが〜〜」



生きてるなら教えてもらった部署に連絡をすれば引き取りに来てもらえると、電話をするため家の中にダッシュ

する私におかんが「あかんあかん!」と叫んでいる。

生きている動物を引き取りにくるのは保健所なので、保健所に行けば殺されてしまう。

動けるなら逃がしてやったほうがいいというのである。



そうか・・・・。



ところが、そんなことを言っている2.3分の間に犬は忽然と姿をくらましてしまったのだ。

一番近くにいたおとんも気づかないうちに、周りの何処を探しても犬はいない。

?????



どんだけ元気なんや・・・・。

どこの犬や・・・・。

??????



30分ほどの出来事だったが夢のようで、しかも疲れ果てた。



その後、保健所に通報しようとした私を、おかんがネチネチと責める。

日頃、ブチブチとおとんの愚痴をこぼしているくせに、「やっぱお父さんはえらいわ〜」と言っている。

たかが犬のお尻を棒でつついただけじゃないか・・・・。

まあ、「死んでるなら飼い主を探して遺体を返してやらんと」と言っていたおかんはやさしいかも。



動物愛護団体の人ならすぐに犬に駆け寄り、病院に連れて行くなり供養するなりするだろう・・・・。

そうです。私は薄情者です。