青年

ケーブルTVのリモコンの使い勝手が悪いため、半月前に交換を依頼。
今朝9時に業者さんがやってきた。
180センチ位ありそうな大きな若者で、とっても無愛想。目を合わそうとしない。
さっと部屋に入ってTVの前で作業を始めた。
後ろ姿は(おそらく)寝ぐせではねた髪の毛に大きな背中。黙々と作業をしている。


ケージの中でトラジ大騒ぎ。
煩いので庭に出した。
部屋にいるのが何となく気まずくてウロウロ。外に出ていたらどうやら終わった模様。


初めて正面を向いた。
ものすごい速さで説明を終えようとする。でも感じは悪くない。好青年だ。
「実家が昨年の夏CVTVにしたんですけど、またリモコン変わったんですね」と尋ねると、
少しはにかみながら「はい、これが最新です」と言って頬が少し緩んだ。
それでも何か緊張しているのがわかる。


青年はマスクをしていたが端正な顔立ち。
眉間からおでこかけて縦7センチほどの凸凹したアザがあった。目立つものである。


受領印を押すとさっと道具をまとめて立ち上がった。


私 : ちょっと待ってくださいね。犬が・・・
青年: 噛みつかなかったらいいですよ
私 : 噛みつきは絶対ないけどジャレますよ


玄関前にいるトラジを捕まえて抱っこし、頭を差し出すとナデナデしてくれた。
遊んでほしくて要求吠えするトラジ。
「駄目だよ、みんな忙しいから遊ぶ暇ないよ」と言う私に、青年は少しはにかみながら
「どうも〜」と言って帰っていった。
最初の時の緊張はかなり解けている様子だった。
初対面でバリアを感じた青年。本来は人懐っこい性格なのかもしれない。


初対面の時の身体から醸し出す緊張の雰囲気。
カバーメイクをしていなかった頃の記憶が蘇った。


想像だし考えすぎかもしれないが、たかがおでこのあざといえど、いくつかのイヤな思いを
してきたに違いない。


おばさんにはよく分かるよと、心の中でつぶやいた。