親族呼称

旅番組などで、旅人のゲストが地元の人に「おとうさん」「おかあさん」と声かけをして

いることがある。

この地方の「旅してゴメン」という番組で、ウド鈴木が漁師さんに「おとうさん」と声を

かけて「あんたとそう年ちがわん」と叱られた。

誰彼かまわず「おとうさん」「おかあさん」と呼びかけるウドちゃん。いつかそんなこと

になるだろうと思っていた。




いつも思うのだが、子どもを持たないおじさん、おばさんもいるだろう。そういう人に

「おとうさん、おかあさん」の声かけはまずくないけ。

自分に「おかあさん」と話しかけられたら、そんな呼び方されたことがないのでもの

すごく違和感を感じる。

では、「ご主人」「奥さん」と声をかければいいかというと、相手が独身者だったら

さらに違和感があるだろう。




少子化で晩婚もしくは独身者が多くなる一方の日本。

何十年か先にはそういう呼称が合わない人が増え、声かけにも気を使わないといけない

時代がくるのかな。




なんにしても日本の呼称はむつかしい。




母が50代の頃、スーパーの若い店員(男性)に「おばさん」と声をかけられたと言って

怒っていた。母曰く、私はあなたのおばさんじゃない。

その話を聞いて私と姉は苦笑していたが、いくつになっても女性に「おばさん」は禁句の

ようだ。




その二十年後、交番で若い警察官に「おかあさん」と呼ばれたと言って姉が怒っていた。

スーパーの駐車場で車をぶつけられたため、加害者と交番に行った時のことだ。

「**ですって名前を名乗って免許証も見せてるんだから、**さんって名前で呼べば

いいのに! ふんっとに田舎の交番だわっ!」と言って怒っていた。




普通なら母親世代の姉。若い警察官は、よもや姉が若くして夫を亡くしているなんて思いも

よらないだろうが、姉の気持ちを考えるとやっぱり誰彼かまわず「おかあさん」呼ばわり

するのは無神経だ。




そういえばホンの数か月前、母がデパ地下で「おばあさん、これ食べてみて」と声をかけ

られた。母は孫がいないので「おばあさん」と呼ばれたことはない。友人やご近所からは

「**さん」と苗字で呼ばれる。




その時、違和感を感じつつも母と一緒に差し出された試食に手を伸ばしたが、姉はさっさ

と遠くに行ってしまった。あとで聞くと、母が「おばあさん」と呼ばれたことにムッとしたらしい。




昔行きつけだった焼き肉屋の奥さん(推定65歳)は、店が超忙しい時ものすごく不機嫌

で、夫が「おばさ〜ん」と呼んだら無視された。

私と姉に注意を受けた夫が試しに「おねえさ〜ん」と呼んだら、「は〜い」と言って

満面の笑みですぐにやって来たのでびっくりした。

自分が60代で「おねえさん」と呼ばれたら、おちょくられていると思って逆にムカつくと

思うのだが、焼き肉屋の奥さんはそうではないようだ。爆。




なんにしても呼称はむつかしい。

ウィキペディアでは、「お父さん(おとうさん)とは日本語で父親を呼ぶ最も一般的な

親族呼称法のひとつ。」とある。

親族呼称を他人に使うことに無理があるのかもしれない。




現代は親族呼称に当てはまらない人が増えているに違いないけれど、あまりこだわり過ぎ

るとやっかいだ。

それでも自分がスーパーの若い店員に「あばさん」もしくは「おかあさん」と呼ばれたら

ムッとするだろう(笑)。

では、店員さんはどういう声かけをすればいいんじゃ(笑)。

「お客さ〜ん」と呼ぶのが無難かな(笑)。





独身時代「俺が」「俺が」というスタイルで生きてきた石井さんは、父親になって周りとの

関わりが一変されたそうだ。

世界が広がるのだろう。




会社で子どもの話題になった時、夫は会話に入れない。

そんなことは過去に何回もあっただろう。

子どもがいないということは世界を狭めることにもなるのだが、夫の場合はおそらく気にしない。

私の場合は、よその子どもの話を聞くことが全く苦ではない。

逆に興味深々だ。

おまけに私の周りには、独身、キッズレスが多い。

少子化社会の図式のようだ。




本当の意味での親族呼称と無関係になるのが、今話題の「無縁死」だ。

ホームレスの人は「**さん」という本人固有の苗字も訳あって捨てている人がいるそうな。




何はともあれ、「おかあさん」と呼ばれて目くじら立てるような小さい狭い人間にはなりたくない

のだが・・・・・・、




たかが親族呼称。

されど親族呼称。