付き添いロードのえいきち

病院から徒歩6、7分のところに無料駐車場があり、毎日そこを利用している。

病院の敷地内にちゃんとした駐車場があるのだが、通院患者以外は有料になるので、少しの時間だけ駐車

する見舞客や、入院患者の家族でもお金があり余っている人以外は、歩いて無料の駐車場に停める。

その道を私は「付き添いロード」と名付けている。



住宅街の細い付き添いロードを歩く人の中に大きな荷物を持っていたり、係の人から受け取った駐車券を

持って急ぐ人がいる。一目で入院患者の家族とわかる。

昨日は超ミニスカートのきれいなお嬢さんが大きな荷物を抱え、駐車券を掌からヒラヒラさせてダッシュ

していた。




先週、病院から出て日もどっぷりと暮れた中、姉と付き添いロードを歩いていた。

途中、チカチカと光るものがありジッと目を凝らすとペンライトで、女性が犬を散歩させていた。

更に目を凝らすとその犬は、姉んちのタロウにそっくり。

二人で「タロウにそっくりタロウにそっくり」と言いながら近づき、「亡くなった犬にそっくりなんです」

と声をかけた。

タロウにそっくりの子は黒柴で、名前は「えいきち」。



ほどなく駐車場に着くと「**さん、ティッシュ持ってない?」と言い、姉は鼻をかんだ。

暗くて気付かなかったが、タロウにそっくりな子を見て涙がでたのだ。



昨日その話を母にした。

しばらくは興味なさげに聞いていたが、「**さん泣いて鼻かんでたよ」と言った瞬間、顔をくしゃくしゃにして

泣き顔になった。


えいきちにはその後もう一度会った。

夜道、同じように散歩中で、すれ違いながら「えいきち君でしたっけ?」と声をかけると、「そうですよ。フフ、

おやすみなさい」と言って、女性は私の後ろ姿に返事をしてくれた。


その話も続けてしたのだが、母はへちゃけた泣き顔のまま聞こえてないようだった。

手術後で、おまけに絶食の人に話すことではなかったかなと思ったが、子どものために頑張らねばと思って

くれたら良いカンフル剤になるかも・・・・。

そういうことにしておこう。